こんにちは。鎌田美希子と申します。

私はロッカクケイLLC.の代表で、プランツディレクターとして活動しています。働きながら、2018年に千葉大学大学院の博士課程に進学。現在は園芸学研究科で植物がヒトに与える効果について研究をしています。

まずは、植物を愛する私の歩みと、多肉植物のクッションを開発した経緯や、オフィス緑化のストーリーをお伝えします。そして、日本の大切な文化である「祝い花」のカルチャーを変えたい、という熱い想いから生まれたプロジェクトを紹介させてください。

東北で生まれ育った私は、自然がいっぱいの場所で生まれ育ちました。幼少期からなぜか植物が好きで好きでたまらなくて、放課後はもっぱら林の中で植物観察と植物採集。お気に入りの植物を引っこ抜いて自宅に持ち帰っては植えてみたりと、とにかくたくさんの植物を育てていました。週末も山や森に連れて行ってもらって、植物観察。とにかく植物に夢中な子供時代を過ごしました。

大学では農学部に進学。大学、大学院では植物の遺伝子の研究をしていました。

社会人となり、東京で暮らすようになって、無機質なオフィスで仕事する日々のなかで、都市やオフィス空間には自然や植物が少なくてつらいなぁと感じました。

ふと、植物が少ないからこそ、都市空間では息苦しさを感じたり、イライラしたり、疲れたりするのではないか、と考え始め、オフィスや個人宅やお庭など、様々な場所に植物に届け、空間に緑をインストールする仕事をはじめました。

プランツディレクターとして、いろんな場所に出向き、様々な人たちの声を聞く機会が増えるなかで、人々の植物に関する興味や関心の薄さを実感しました。また、日常生活のなかに、自然や植物とのふれ合いが少なく、距離が遠いことなどがわかってきました。

あれ、みんな植物の知識があるわけじゃないの？ 好きな植物について詳しく調べたりしないんだなぁ、と気づいたのです。驚かれるかもしれませんが、当時の自分にとってはかなりびっくりしたことでした。

もっと植物のことを知ってほしい。

そしてヒトと植物の距離を近づけたい。

忙しい人でも植物が身近にある生活を送ってほしい。

そんな想いを込めて、2015年に多肉植物 × クッションの "たにくっしょん®︎"シリーズを発表しました。

この多肉植物たちが.......

個性豊かな多肉植物がクッションになりました！ 

色あざやかな、お花  × クッションのシリーズ、
おはなくしょん®︎（Ohanacushion®︎）も誕生しました！

お花のシリーズは、母の日のギフトやお祝いの贈り物としても、とても喜んでいただいています。

たにくっしょん®は、多肉植物を本物そっくりに再現しました。

本当は室内で育てることのできない多肉植物を、そっくりの存在感で再現するだけでなく、もっと魅力を生かして丸みのあるクッションにすることで、人の心や感性に訴えかけるようなプロダクトを目指しました。

水の少ない荒野のような土地で、生存戦略を磨いてきた多肉植物。葉の組織に水を蓄えて、途方もない長い時間をかけて高度に進化してきた多肉植物たちの姿・形はとにかくユニーク！！

さらに、多肉植物たちの構造は、ユニークな中にも一定の秩序が存在していて、規則的なルールを持ちながら成長していきます。その形は、じっと見つめても飽きないほど美しいのです。そんな多肉植物の魅力を、身近に感じられるたにくっしょん®︎ は、抱きしめられる多肉植物でもあります。

また、たにくっしょん®︎は空間緑化プロダクトでもあります。基本的には屋外でしか育たない多肉植物ですが、オフィスやお部屋の空間をたにくっしょん®︎で緑化して、その多肉植物が大好きになったら、本物は屋外で育ててみましょう、という密かなメッセージも込めています。

植物の日本語の名前である和名や、生物固有の名前である学名をクッションに記載することで、興味を持ってくれた方が、正しい知識や育て方などににアクセスしやすいように設計しています。

たにくっしょん®︎シリーズのラインナップには、個性豊かな多肉植物が揃っていますが、実はほとんどが私が育てている植物です。それをひとつずつフォトグラファーに撮影してもらうところから、たにくっしょん®︎の制作がスタートしました。

私はモノづくりメーカーになりたいわけではなく、あくまでも人と植物の距離を近づけるのが目的。なので、1点1点こだわって、納得のいくまで形や柄の出方にこだわっています。そして、たにくっしょん®︎ をモノとしてではなくて、本物の植物のように考えています。言うなれば、私の作品として、ひとつひとつをアートピースのように考えてたにくっしょん®︎を作っています。

たまに、たにくっしょん®︎を見た方から、「海外で大量生産して、値段を下げて小売店に卸して販売したらいいじゃないか」などとアドバイスをいただくこともあるのですが。私自身はそんなことをしたいとは思わない、というのが本音です。

同じモノ大量に安く作ることは、誰にでもできます。実際に複数のメーカーさんがたにくっしょん®︎︎にそっくりな商品を作って、販売しているのを目にしたり、耳にしたりするようになりました。

しかし、私が成し遂げたいことは、あくまでも植物と人間の距離を近づけることであり、空間を緑化すること。たにくっしょん®︎ はその手段のひとつなのです。

無機質な空間を、緑いっぱいの心地よい空間にしたい。なるべくその場や人に合わせて、オーダーメード的に緑化方法を考えることが、プランツディレクターの私がやるべきことだと思っています。

たにくっしょん®︎は、布の裁断、縫製、綿詰め、刺繍という行程を、一点一点とても丁寧にハンドメイドで作っています。

モノづくりの経験がなかった私ですが、周囲の人たちの協力を得て、すばらしい職人さんと出会うことができました。

複雑なパターンで、布を裁断、縫製し、丁寧に綿をつめてプリっと膨らんだ多肉植物の立体感をだしています

たにくっしょん®︎の自然な丸みは、職人さんの匠の技です。

最後の仕上げに刺繍を施すところまで、全てが手作業です。

植物を育てるように、クッションを作る。それが、たにくっしょん®︎のこだわりです。

日本や世界のあちこちを旅して、いつも気になってしまうのは、その土地で自生している植物たち。本来生きるべき場所で、たくましく生きる植物たちは、やさしく力強い存在感やエネルギーを感じさせてくれる存在です。

たにくっしょん®︎には、私が旅先で一期一会のように出会った植物たちをコレクションした「自生地シリーズ」もあります。

サボテンや多肉植物の聖地ともいわれるアメリカのアリゾナ州で出会った、アガベの吉祥天や、マレーシアのボルネオ島で出会った世界最大の花ラフレシア。メキシコで長距離バスに揺られて探しに行った珍しいサボテンの群生株や珍しいアガベの仲間たち。

どれもこれも、私の想いや好きが詰まっている、私の子どもであり作品でもある、大切な存在です。

たにくっしょん®︎を使った空間の緑化は、オフィス空間にもピッタリです。

オフィスに植物を置きたくても、ビルの管理上、植物を置けない環境だったり、お世話やメンテナンスを担当する人がいなかったりすることもあります。うまくお世話できなくて枯れるのは避けたいから、虫が出るのが怖いから......と様々な理由がありますが、結果として何もないままの殺風景なオフィス空間が多いのです。

一般にはまだ浸透していないかもしれませんが、「バイオフィリア」という言葉があります。人間や動物は生まれもって、自然界を「好む」性質を持つのではないか、という仮説のことです。

私たち人間は、自然や生き物や植物たちを本能から欲しているのではないか、と注目されているのです。現在では、自然によって、人が癒されたり、ストレス値が下がったり、元気が出たりする効果を検証する研究もされています。

例えば、多くのエンジニアが活躍するクラウド名刺管理サービスを展開するSansan株式会社さまのオフィスにあるオープンスペースの緑化をサポートさせていただきました。一気に雰囲気が明るくなり、作業やミーティングをする社員が増えたように感じます。また、クッションという実際に触れられるアイテムが置かれたことで、より植物が身近に感じられ、リラックスした状態で働けるようになりました、とうれしい感想も届きました。

これらの活動を通じて、「どんな空間にも植物があることを当たり前にしないといけない！」。私はそんな風に考えるようになりました。

近年、海外では、住宅やオフィス、公共空間の設計考える際に、バイオフィリア仮説に基づいたデザインを採用し、環境の中に植物や水、太陽の光を取り入れるバイオフィリックデザインがトレンドになってきていますが、日本では、まだまだ積極的に取り入れられていないのが現状です。

現在、私は植物が人に与える効果について、きちんと自分で調査・研究をしたくなり、大学院に戻り博士課程の学生として、「空間の緑化が人に与える効果」の研究をしています。研究結果を出すには、長い時間が必要ですが、応援してくださる皆さまや企業さまの協力を得て、なんとか研究を進めています。

発表直後から、たにくっしょん®︎はお引越しやお祝いなどのギフトとして、とても良いね、との声をたくさんいただきました。

「お祝いといえば、そうだ、お花も贈りたい！」

こうしてギフトにも、オフィスのお祝いにもぴったりなたにくっしょん®︎でお祝い花のスタンドを作ろうと思いついたのです。

日本では、お店の開店祝いや周年祝い、オフィス移転祝い、ライブの出演祝いなど、個人・法人を問わず、お祝い花を贈るシーンはたくさんあります。

しかし、その選択肢は、花輪、スタンド花、鉢植えの立派な胡蝶蘭、観葉植物の鉢植え、たまーにバルーンのスタンドがあるくらい。ここ数十年アップデートがありません。

選択肢も少なく、ちょっと古めかしい。様式が決まってしまっていて、相手が本当に喜ぶお花が何だろうと考えて選ぶことができません。これではお花を贈る文化が衰退してしまう可能性もあり、もったいなさを感じていました。

そこで、日本が育んだ素晴らしい文化のひとつであるお花を贈る習慣をアップデートしたいと考えました。

たにくっしょん®を生かして、驚きといろどりに満ちた、「お祝い花スタンド」を新しくデザインし、サステナブルな仕組みを開発し・運用することを、様々なプロとともに進めていきたいのです。

なぜ、たにくっしょん®のお祝い花があるといいのでしょうか？  もちろん私も、贈られるお花の全部がたにくっしょん®祝い花になる必要はないと思っています。たくさん贈られるお祝いのお花には、本物のお花や、植物がありますが、もし、その1つがたにくっしょん®祝い花だったら...?

そのままクッションとして空間の緑化に使えます。

捨てられずに、その後もオフィスを彩ることができます。祝い花を贈られた方も贈る方も、双方にとって嬉しいギフトになると考えています。

今まで、実際に様々なオフィスやお店に直接お届けしてきましたがが、贈られた方がびっくりして、喜んでいらっしゃる顔を拝見してきました。贈られた方の記憶に残るギフトになります。

これまで、たにくっしょん®祝い花を飾るスタンドは、ベータ版として手作りしてきましたが、たくさんの困難に直面し、いまだ完成に至っていません。

例えば、枠のデザイン。たにくっしょん®をより魅力的に飾るために透明の六角形にしました。自身の会社の名前にするほど大好きな六角形は、生物界でも有機化学の世界においても最も安定した構造と言われています。また蜂の巣に代表されるように、無限に繋がっていける形でもあります。現在は、Fab施設でアクリル板をレーザーカッターで六角形に切り抜き、アクリルのパーツを使って自作をしています。これは、費用も時間もかかるやり方ですが、現在の私たちではこれが精一杯の状況です。

ちなみに、この手作りの枠には膨大な時間と1つあたり2万円ほどの費用がかかっているので、何度もくり返し使うことを前提にしています。他の祝い花スタンドと同じように、贈り先にお届けした後、一定期間を経てから回収に伺っています。

しかし、たにくっしょん®︎お祝い花スタンドを引き取りに行くと、引き取りをお伝えしてたにも関わらず、ゴミ置場に捨てられていたり、バラバラに分解されて捨てられそうになっていたり。

実は、祝い花スタンドは後日回収するのが慣例ではあるのですが、一般にはその理解が広がっていないため、廃棄しようとして壊されるケースが多いのです。まだ手探りな活動ではありますが、何度もこのような経験をしては、いつもガックリと肩を落としています。

スタンドも、最初はお花業界の規格に合わせていたのですが、このスタンドも回収が困難なのです。盗まれるというか、他のお花屋さんが引き取りに来た際にまとめて持って帰ってしまうのです。名札をつけても、あまり意味はありませんでした。

お花屋さんと同じスタンドにするから回収されてしまうのだと、オリジナルの木製スタンドを製作してみました。しかし、結果としてこれも無残な姿で発見されました。

3年ほど、手探りでプロトタイプを作ってきましたが、きちんとたにくっしょん®祝い花を環境にやさしいギフトにするために、あらためて、新しくオリジナルのスタンドを開発し、ストックを作っていくことが必要だと実感しているところです。

また、お花屋さんと提携するなど、運用の仕組みも考えていかなければなりません。

現在、ロッカクケイはとても小さな組織で、できることは限られています。

けれど、たにくっしょん®をもっとたくさんの人に届け、オフィスやお部屋を緑化し、私の壮大な目標である「人と植物の距離を近づける」を達成していくためには、思い切った、挑戦が必要です！

たにくっしょん®を、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。

空間の緑化に使ってもらい、捨てられないお祝いを贈ってもらいたい。そしてお祝い花の新しい選択肢として確立させていきたい！

オフィス用のお祝い花だけでなく、引っ越し祝いのギフトとして、お家のインテリアやアートのスパイスになるような、たにくっしょん®の居場所にもなる小さな什器も開発したいと思っています。

これらの目標を達成するためには、贈られて嬉しい什器の開発や、仕組み化のための費用が必要となります。

歯がゆさを感じながら、一歩ずつ前に進んできた4年間。空間の緑化事業として、新しいお祝い花の選択肢として、もっともっと挑戦していくために、初めてクラウドファンディングに挑戦する決意しました！

わくわくするギフトを通じて、お部屋の植物を増やし、空間を緑化し、祝い花を広めていきたい。人と植物の距離がもっともっと近くなる世界を、本気で夢見ています。

たにくっしょん®︎祝い花は2020年には、正式に運用を開始できるように、実現に向けて頑張っていきます！みなさまのご支援・応援をよろしくお願いします！

ロッカクケイLLC.

Mikiko Kamada (代表／Plants Director)

北海道大学大学院農学研究科を修了。卒業後、野菜種子メーカーにて開発に携わったのち、インドアグリーンについて学びプランツディレクターとして独立。アカデミックな知識と植物の"funny"な世界観の両立で、人間と植物の関係性を再構築する。室内緑化ツールとして、多肉植物をリアルに再現した【Tanicushion®】、その後祝い花をクッションにおとしこんだ【Ohanacushion®】を発表。空間を緑化することの重要性を研究するため、2018年より千葉大学大学院園芸学研究科博士課程にて「植物とヒトの関係性」の研究を開始している。

Taro Yasuzawa (雑用)

2006年より13年間に渡り長野県木祖村にて開催される野外ミュージックフェスティバルTAICOCLUBを主宰。来場者数1万人の日本を代表する音楽フェスティバルの一つへと成長させ、2018年にその幕を降ろした。現在は新たな場づくりと文化的指標の仕組み作りなど取組を始めている。
 

リスク&チャレンジ

・万全を期してはおりますが、場合によってお届け等に遅延が発生する場合もございますのでご了承ください。
・デザイン/仕様については一部変更の可能性もございますのでご了承ください。