目の前を歩く彼の背中には、COSのメッセンジャーバッグが揺れている。

私が彼にプレゼントしたバックだ。

「三軒茶屋が熱い！なぜなら、馬肉の名店が揃っているから」

今日は、新しくオープンした太子堂馬肉料理店に連れて行ってくれるという。

「絶対に旨いはず！エビデンスがある・・・」

「いらっしゃい。お待ちしていました。」
河村祐二さんが、私たちを迎えてくれた。馬肉のスペシャリストだという。

すぐにコースがスタート。

いきなりの赤身！鮨屋で言えば、マグロを最初に出すようなものだ。

なんて乱暴な・・・って思ったけど。彼の分析に驚いた。

「これは、ウエルカムドリンクだ・・・しかも、自慢の赤身で宣戦布告している。」

なんで？なんで？

「酢飯がほうじ茶の香りがする。そこに赤身をのせて、まさに、これから始まるコースの名刺がわりの逸品だ。」

「キレイ！」と思わず声がでてしまった。馬肉の鮮やかな色に驚いた。

赤ワインをぐいっと飲んでから、馬ハツ刺しを頂く。

なんて・・・透明感のある香りなんだろう！

河村「臭みがないでしょう！ハツは、一頭から500グラムしかとれない希少部位。

私がほれ込んだレバ刺し、すぐに飲み込まないで、じっくりと口の中で味わってください。」

「なめろう？」と聞いて驚く！普通は、魚のたたきだから。

これを馬でつくるんだ！

河村「チョウチンと呼ばれるバラをたたきます。チョウチンは、馬肉の中で一番美味しいと言われる部分。私が作ったセミドライトマトを合わせました。

このトマトは、茨城県つくば市のスマイルファームで採れた「こだわりトマト」を使い、セミドライにすることで、旨味を凝縮させました。」

そこに、味噌やオリーブオイルやケッパー、大葉を加える。

「確かに！なめろうが生まれた！」

河村さんが、馬肉へのこだわりを熱っぽく語り始めた。
「今回、店をオープンするきっかけは、熊本の千興ファームの存在です。」

彼が口をはさんだ。
「千興ファームといえば・・・あの名店の仕入れ先と同じだ。だから美味しいんだ！」

河村「長く馬肉に携わってきた中で、千興ファームさんの馬肉は味、鮮度、品質、どれを取っても完璧。

現地を訪問してきましたが、徹底した品質管理体制や「いのちを頂く」を心から大切にしていました。」

試行錯誤の後、千興ファームの馬肉のポテンシャルを最大限に引き出す料理が完成。
それが、太子堂馬肉料理店のオープンにつながったという。

まだまだ馬肉の幸せコースは続く。

特選馬刺し4種（ショーオビ、カイノミ、ヒレ、フタエゴ）

選び抜かれた馬刺し4種を頂く。定番の相棒といえば、甘い九州の醤油。
しかし、そこも馬肉を極めた太子堂馬肉料理店は一味違う。

昆布の佃煮や奈良漬けと一緒に馬刺しを頂く。

「新体験！新たな相棒によって馬刺しの世界が変わった！」

馬肉の最終形のような店を作り上げたのは、人気店を次々と作り出す名プロデューサーの大靏哲生さん。

大靏「美味しさだけでなく、見た目の演出にもこだわりました。」

お皿にもこだわりっている。江戸時代や明治時代のお皿を使用。
また、錫などの日本が世界に誇る和食器が並ぶ。

店内は、カウンターがメイン。目の前の囲炉裏で料理が作られ、提供される。
馬肉のオープンキッチンは、まるでショーを観ているかのようだ。

彼との距離も縮まる！

大靏「新鮮な馬刺しも、炭で焼いた料理も、1番美味しい状態でお客様に提供できる事を目的としました。」

馬肉の新世界は、まだまだ続く。
次は、他では食べられない馬肉の生ハムを季節の果物と合わせた一皿。

馬肉がフレンチの世界に入り込んだ！さらに・・・

和の世界が続く。

河村「その日の1番美味しい真牡蠣を調理直前に蒸しあげ、旨味を最大限に残した状態で、馬刺しと一緒に食べてください。」

真牡蠣と馬刺し！新しい世界、未体験の風味が爆発！

「お酒をください！早く早く」

とにかく、このコースは、お酒好きにはたまらない。
希少な日本酒もあるから、ペアリングを楽しむ。

さらに、お酒が進むラインナップが続く。

炉端焼きのプリンセスともいうべき存在が「さつま揚げ」

河村「これもこだわりまくってます。魚の実をすりつぶすところから作っています。」
軽く炭火で炙っただけ。だから、外はサクッと中はふわっ
表面にふられた生のからすみがアクセントとなっている。

「なんて！贅沢！」

「待ってました！！！！！」

彼の大好物だという。
一口食べると、うま味と香りと肉汁がじゅわっと広がる。
馬肉の概念がかわりそうだ。

彼が興奮ぎみに話し始めた。

「これはね、贅沢にエシレバターをつかって、馬ヒレカツをじっくりフライパンで焼いてから、カラリとあげてあるんだ。」

カツを食べた後の口直し！新生姜のソルベ

さっぱりと口の中がリセット！「さあ、後半戦行ってみよう！」

ほろ酔い気分もシャキッ！

淡路産の玉葱はじっくり火を通し、甘味を凝縮し玉葱のポテンシャルを最大限に引き出しました。

口の中でとろける玉葱の甘みに楽しみながら、大田原市の渡邊きのこ園の立派な椎茸を

囲炉裏でじっくり焼き上げてくれる。馥郁たる香りが店内に広がる。

「椎茸の露が浮かび上がる最高のタイミングで召し上がっていただきます。」

ニューヨークのレストランも大絶賛している茨城県土浦市の野口れんこんを使用。
実は、蓮根は、鮮度が命。採れたての真っ白な蓮根は、フルーツのように甘い。

「すぐに予約が取れなくなる店になりそう。誰にも知られたくない。」

と訳のわからないことを話し始めた。

焼き野菜の王様、威厳さえ感じる立派な長茄子が登場！

白くツヤツヤとした実をパクリ。
炭火の香ばしさとジューシーがマリアージュ。白ワインと合わせたい！

河村「焼き野菜は、全国有数の地から産地直送で送ってもらい、シンプルに食べて美味しい物はシンプルに、素材の美味しさを活かせる物は最大限に活かしながら調理していきます。」

「ウマい！ウマい！鱧と馬肉がこんなに合うとは・・・」彼が叫んだ。

これは、馬ヒレと旬の鱧を合わせ、大葉と梅肉と一緒に天ぷらにしたもの。

仕上げに出汁をかけて頂く。

さあ、メインの馬肉焼き4連弾へ！

希少部位が登場！

河村「これは、シビレ！胸腺の部分です。
仔馬からしか採れない希少な部位で、その食感はふわふわとしていて口の中でとろけます。馬のシビレは、おそらく肉史上最強だと思います。」

太子堂馬肉料理店の真骨頂ともいえる一皿。

チョウチンは、馬肉で一番美味しいとされてる部位。
これを炭火で焼き上げることで柔らかいままジューシーに仕上がる。

「幸せ～！」と誰もが頬張った瞬間に叫んでしまう。

馬のタン、初めてたべる。歯触りが絶妙！
入口はあっさり、でも、噛めば噛むほど肉の旨みがわきだしてくる。

ダジャレか！でも、おしゃれなダジャレだ。

ねぎ馬（ねぎま）焼きは、馬の中落ちとネギの串焼き。
中落ちの脂の旨みをネギの辛みが押し上げる。

「赤ワイン、お代わりください。」

白子？馬の白子はセキヅイの部位だそうだ。

「まるで魚の白子のような食感」
口の中をさっぱりと整えてくれる。今度は白ワインをください。

もう、お酒が止まらない！

やっぱり「すき焼きが好き」

産地直送の野菜の旨味が溶け出したすき焼きベースのお出汁で、
馬肉の霜降りと素材の味を複雑に絡ませた贅沢の極みです。

幸せの連打！「馬肉ってこんなに美味しかったっけ？」と普通に思った。

河村「そろそろ、仕上げの時間です。」

「鰻巻きではなく、ままきです。」

馬肉のそぼろと一緒に巻く出汁巻きは、信じられないくらいオイシイ。
私たちの目の前で、仕上げてくれる。島根県産本山葵を合わせて頂く。

河村「島根県の吉賀町は、水源の町。美しい川で育った山葵にこだわりました。」

「ご飯がオイシイ店は、嬉しいよね。」

土鍋の「おくどさん」を使用。遠赤外線でじっくり炊き上げた「甘い　特別栽培米つや姫」を頂く。

最後はやっぱりごはんだ！

「アッツアッツのご飯」の上に、粘りが強くて有名な青森県産の長芋のとろろに、ちょっぴり本山葵をのせて頂く。

つや姫が、白化粧をしたようだ。

口当たりがムースのように滑らかで甘さを感じる。
そして最後にワサビがピリリ。

口の中が幸せになったところで・・・

さらに北海道産の最高級雲丹をのっけてパクリ。

「ノーコー（濃厚）」

熊本の馬を堪能した後で、北海道の雲丹や青森の長芋
今日は、日本一周をしたようなラインナップだった。

最後は、

毎日昆布と鰹で出汁を取り、大粒のしじみの出汁も合わせた香り高いお味噌汁。

河村さんは女心をよく知っていると思った。

デザートは、大粒の苺と自家製の塩あんこ、求肥も自家製でヨモギが練りこまれている。添えてあるロマノフクリームをたっぷりつけて幸せを噛みしめる。

お腹がいっぱいだ！幸せもいっぱいだ！彼氏との愛もいっぱいだ！

河村さん、大靏さんのお二人の経験と実績と知識と夢が全てにつまっていた。

河村祐二

専門飲食店での調理経験12年のうち大半を馬肉料理に携わり、大靏哲生氏の元で馬肉と調理について学ぶ。元三軒茶屋馬肉専門店3年・三軒茶屋馬肉専門馬ちゃ 立ち上げから店長として4年。今回の太子堂馬肉料理店も立ち上げから店長として勤める。

大靏哲生

三軒茶屋馬肉専門店や焼肉店など、多くの人気店をプロデュース
元大手ホテル シェフ・元恵比寿 白金 スペイン料理 シェフ・元馬肉専門店大将
馬肉専門店数店舗、焼肉店数店舗を立ち上げ。
直近で梅ヶ丘に焼肉屋をプロデュース。
その他坪売上50万規模のお店を続々とプロデュース。

【太子堂馬肉料理店】

営業時間 ：18:00〜24:00（L.O.23:30）18:00〜コース、21:00〜アラカルト

住所：東京都世田谷区太子堂4-18-15マガザン三軒茶屋2 203

電話番号：03-6804-0727