SYRINXを主宰する建築家の佐藤宏尚と申します。
素晴らしいイタリアン・ヴァケッタレザーを、贅沢に一枚革で使用し、新しくなった「TSUTSUMU Document Case《包む》A3判2つ折ドキュメントケース」（特許庁意匠登録済）を発表致します。
贈答品に使われる風呂敷、袱紗、熨斗袋など、日本では、大切なものを丁寧に包む文化があります。この「包む」という日本の伝統的な美意識からドキュメントケースをデザインしました。
一枚革を折り紙のように美しく折り重ね、大切な資料やノートパソコンを包みます。その格別なケースから、丁寧に資料を取り出す所作はプレゼンテーションに箔をつけます。
カラーは表面が滑らかな標準8色に加え、特別仕様のヌバックレザー4色をご用意しました。

今回のドキュメントケースは、以前販売していた商品の改良版となります。
以前は、4箇所の革の留め合わせが、それぞれバネホックで取り外せる仕様でした。
しかし、しばらく使用していると気になることがいくつか出てきました。

・バネホックを外さなくてもA3の資料の出し入れに支障はない。
・分厚くならないようにケースの左右でバネホックの位置をずらしていたが、革に金物の跡がつきやすい。
・開閉に使うマグネットホックのボタン状の裏側に書類が引っかかりやすい。

これらを解決するため、開閉に使う2対のホック金物でそのまま革を重ねて留め、マグネットホックを廃し、究極にシンプルなデザインにうまれ変わりました。

「大切な資料だからこそ、最高の素材で包みこむ」
TSUTSUMUに使用する革は、ずっと触っていたくなるような柔らかく吸い付くような心地よい手触りです。そして使えば使うほど、美しく、味わい深く変化します。
その上質な革を、革の持ち味を最大限堪能できる元厚のまま、贅沢に一枚革で仕立てました。
厚革を使用した製品は、サイズも大きくなりカジュアルな雰囲気になりがちですが、TSUTSUMUはステッチがないので、サイズに無駄がなくコンパクトな仕上がりです。
エッジラインが、流れるように連続するシンプルなデザインで、エレガントな雰囲気を纏います。
また、折り曲げた革を、ホック金物で留めただけのミニマルを極めたつくりです。

プレゼンテーションや打ち合わせに必要なのは、書類だけではありません。タブレットやノートパソコンも、今や必須のアイテムです。
TSUTSUMUは、すべてをまとめてやさしく包むことができます。
サイズは13インチのMacBookPro（h14.9 w304.1 d212.24 mm）や12.9インチiPad Pro（h6.9 w220.6 d305.7 mm）も収納可能。
ドキュメントは、A4のカタログやパンフレット、クリアホルダー（w220 h310 mm）だけでなく、A3（w420 h297 mm）の図面や資料、楽譜も折り目をつけずに半分に畳み、コンパクトに持ち運びできます。

SYRINXの標準８色のテクスチャーは、イタリア語で「滑らか」という意味のリスシオ（Liscio）というシリーズです。その名の通り、滑らかで、吸い付くような質感。原皮の表情がわかる透明感があり、色艶の深まりが素晴らしく、エルバマットの最もベーシックなテクスチャーです。

色名も、「緑」や「青」などと異なり、イメージがしやすい洒落た名前がつけられています。

Cammello 「らくだ」・カンメッロ
Giallo 「黄色」・ ジャッロ
Fieno 「干し草」・フィエーノ
Fragola 「苺」・フラゴラ
Bruciato 「焦げ茶」・ブルチアート
Lattuga 「レタス」・ラットゥーガ
Agave 「リュウゼツラン」・アガヴェ
Nero 「黒」・ネーロ

アメリカ・テキサスの乾いた荒野を連想させるエルバマットのヌバック。柔らかくサラサラとした上品な触り心地が特徴です。
銀面（表側）を起毛させるヌバックは、床面を起毛させたスエードより高価で希少ですが、丈夫で末長く使用できます。
さらにオイルを多く含むので、非常に早いエイジングも魅力です。使うほどに起毛が落ち着き、艶が増し、エルバマットのヌバックならではの味わいのあるエイジングが堪能できます。

Texasの色名も洒落ています。カラーは4色ご用意しています。

Noce  「くるみ（ウォールナット）」・ ノーチェ
Lattuga  「レタス」・ラットゥーガ
Agave  「リュウゼツラン」・アガヴェ
Piombo  「鉛」・ピオンボ

9世紀初頭からイタリア・トスカーナ地方に伝わる「ヴァケッタ製法」。その伝統を今なお守り続けるテンペスティー社のエルバマット・レザーは、自然の樹木のタンニンでなめし、じっくりとオイルを染み込ませた革です。
イタリアに古来から伝わるヴァケッタレザーに用いられる牛脂は、革に浸透するのに、時間とコストがかかりますが、一度浸透すると抜けにくく、ほぼ永久に潤いと艶のある革質を味わえます。そして、牛脂と魚脂を配合し、より多くのオイルを革に染み込ませるのがTempestiの技術、エルバマット製法です。
原皮は、北欧諸国の寒冷地で育った、きめの細かい最高級の牛原皮。その中でも最高級とされる胴部分(ベンズ)のみを贅沢に使用しています。
通常の2倍のオイルを浸透させたエルバマットは、吸い付くような滑らかさで、見事なまでに美しく色艶が深まり、数あるイタリアンレザーの中でも際立つ存在です。
テンペスティー社は植物タンニンなめしの生誕地と言われるフィレンツェ・サンタクローチェ地区にあります。イタリア・トスカーナに存在する約570社の革メーカーの内、厳格な基準をクリアした24社のみが加盟する「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟し、長年に渡り数々のラグジュアリーブランドへレザーを提供しています。

エルバマットの鮮やかで透明感のある色付けは、染料のみで行われます。傷やシミは、型押しや顔料で隠さないので、そのまま残ります。しかし、原皮の風合いをそのまま味わえるのは、最高品質の天然の革である証です。傷やシミも唯一無二の個性として、受け入れていただけますようお願い致します。
染料で仕上げた革は、使い込むほど色が深まり、エイジングを堪能できます。 エイジングに関しては、ヴァケッタレザーの右に出る革は存在しません。中でもオイルをたっぷり含むエルバマットのエイジングは美しく、短い時間で色艶が深まります。
イタリアでは革らしい自然な風合いが好まれ、エイジングを楽しむ文化が息づいています。エルバマットは、イタリアの革文化を継承し、その魅力を堪能できる数少ないイタリアンレザーの１つです。
共に成長していく革なので、入学や進級、就職など新たな門出へのプレゼントにも最適です。

一般的な革は、表面に最初から艶があります。それは、革の最終工程で表面にオイルを塗って仕上げているからです。しかし、表面のオイルは、経年変化で揮発し、光沢を失い、カサカサになります。それが定期的なオイルケアが不可欠な理由です。
一方、エルバマットはその名の通り、最初は艶のないマットな表情です。これは、オイルを表面に塗らなくても、通常の1.5~2倍(原皮の約20%)のオイルを加える製法で、 繊維の中までたっぷりオイルが染み込み、革が乾燥しないというタンナーの自信の表れです。 使い込むほど、内側に含まれるオイルが気孔部分から染み出して表皮をコーティングし艶が出ます。防水効果も高まります。
ここに皮革用オイルを加えると気孔が詰まり呼吸困難になり革が早く老化する事に繋がります。そのため、エルバマットにはオイルケアは不要です。防水スプレー、その他コーティングしてしまうようなものも禁物です。革が呼吸できず硬化します。
何もせず、よく使い革に適度な刺激を与えること、それが一番のメンテナンスです。
コーティングしないので表面は柔らかく傷つきやすいですが、多少の傷は指で擦れば自然に回復します。深い傷も、エイジングとともに馴染み、革の風合いへと変化していきます。
時間と手間がかかるため、現在ではヴァケッタレザーを生産するメーカーはわずかです。革大国イタリアの中でも、エルバマットは、革本来の味わいと扱いやすさを兼ね備えた希少な存在です。

エルバマットは、環境保護に配慮し、家具や紙を製造する為の木材の余剰物から抽出した100％植物由来のなめし剤を使用しています。
人体に有害なアゾ染料、ニッケル、PCPまたはクロムVIのような毒性物質は一切含まれておらず、金属アレルギーに苦しんでいる人も安心して使用できます。
また、「イタリア植物タンニン鞣し革協会」に加盟するタンナーは、サスティナブルな環境を構築するために、廃棄物のリサイクルを徹底しています。
使用する原皮は食肉加工の過程の副生産物を使用。生皮から除去された毛髪は農業用肥料へとリサイクルされます。浄化プラントに溜まる沈殿物は、煉瓦を製造するために建設分野で再利用されます 。
クロム鞣の革は燃焼により発がん物質を生成しますが、植物タンニン鞣しされた革は、その自然由来の化学・生物的特性により、容易に処分できます。
その品質と環境配慮の証として「イタリア植物タンニン鞣し革協会」発行のシリアル入り品質証明書が付属します。

多くブランドの製品は、価格の安価な海外縫製ですが、SYRINXの無駄のないミニマルなデザインには高い精度が求められます。そのため、SYRINXの製品は、熟練の職人が1つ1つ丁寧に仕立て、MADE IN JAPANの品質と安心を提供しています。
金物は信頼性の高い日本製の真鍮無垢のホックを採用。使うほど味わいが増します。
 

製品仕様

外形寸法　：W.225x H.320 x D.30
製品重量　：約410g
素材　　　：牛革（イタリア TEMPESTI社 エルバマット）
生産国　　：日本
付属品　　：イタリア植物タンニン鞣し革協会品質証明書

※ エイジングにより色が変化し、艶が出ます。
※ 生産する季節やロットにより、色・質感などが異なります。
※ 原皮の風合いを活かした染料仕上げのため、傷、シミがございます。
※ モニター環境により、実際の商品の色合いと多少異なってみえる場合があります。
※ 多少の色落ちが生じることがございます。淡色の衣料との組み合わせにご注意ください。
※ 特許庁意匠登録済（第1595192号）
 

A3の図面を折り目をつけずにA4サイズで収納できる図面ケースは、これまで紙製のものばかりで、すぐにみすぼらしくなってしまい不満でした。

そこでデザインしたのが、丈夫なこの革のドキュメントケースです。
ミニマルで、革の素材感を活かしたこのケースから資料を取り出せば、プレゼンテーションで大きなアドバンテージとなります。

それに何度も買い換えることを考えれば、生涯ずっと使えるこのケースは、実はコストパフォーマンスも高い商品です。

さらに、これまでは受注生産で、注文ごとに革を仕入れることが多く、価格を高くせざるを得ませんでした。しかし、今回のブラッシュアップに合わせ、皆様の支援をまとめて募集することで、革の無駄なくし、大幅に価格を下げています。
もしMakuakeの成果がよければ、これまでの定価29,160円を新定価25,920円でご提供できることも視野に入れております。

Makuake初挑戦となった第一弾の「HITOE Long Wallet《単》長財布」は、ユニークでありながらミニマルなデザインで、素材の持ち味を活かし、想像以上の多くの方に受け入れられたプロジェクトでした。

（前作のプロジェクトページ）https://www.makuake.com/project/hitoe/

今回発表したドキュメントケースは、財布のように一般的な商品ではありません。しかし、素材の特性を活かし、さらにシンプルさを極めたデザインに昇華させた、という自負はあります。
旧ドキュメントケースのユーザーは、ほとんどがプレゼンテーションの機会の多い建築家の方でした。モデルチェンジを機にデザイナーだけでなく、ノートパソコンを持ち歩くビジネスマン、楽譜を持ち歩く演奏家など、できるだけ多くの方にこの商品の良さを伝えたい、そう考え今回のチャレンジに至りました。
 

SYRINXを主宰しているのは建築家の佐藤宏尚です。
「新たな価値を創造するデザイン」
を理念に、建築だけでなくオーディオ・レザープロダクトを展開しています。その活動は、国内外での数多くの受賞により社会的に高く評価されています。
レザープロダクトは、スピーカーに使用する革の端材を有効活用することから始まりました。素晴らしい革の持ち味を活かしたミニマルなデザインにこだわった商品開発を行なっています。
一般的な革製品は、革を薄く漉きます。しかし、革によって、厚さ、硬さ、重さなど特徴は様々です。可能な限り元の革の持ち味を活かし、革本来の魅力を最大限に堪能できるモノづくりをしていきたいと考えています。
できるだけ多くの方に、本当の革の魅力を知っていただくこと、それがSYRINXの製品に込めた想いです。

佐藤 宏尚 のプロフィール
1972 兵庫県加古川市生まれ
1996 東京大学工学部建築学科卒業
1998 東京大学大学院修士課程修了
1998 プランテック総合計画事務所入社
2001 佐藤宏尚建築デザイン事務所設立
2014 慶應義塾大学大学院　非常勤講師
2016 東京大学・東京大学大学院　特別講師
（グッドデザイン賞を6度受賞するなど国内外で受賞歴多数）