東日本大震災による避難によって、一度人口がゼロになった南相馬市小高区（おだかく）。このプロジェクトでは、東北で伝統的に行われていた「日本酒にホップを使った製法 = 花酛（はなもと）」をはじめとした様々な酒づくりに挑戦する酒蔵 兼 バー のオープンを目指します。

©️Puddle Inc.

はじめまして、haccoba（はっこうば）代表の佐藤太亮です。

酒業界の生まれでない僕らがゼロから酒蔵をつくることは、業界的に見ても珍しい挑戦です。

しかし、新規参入だからこその新鮮な視点を生かして、日本酒好きな人はもちろん、普段飲まない人でも参加しやすい “関わりしろ” のあるコミュニティをつくっていきます。

具体的には、あたらしいレシピの考案や、パッケージデザインの相談、Makuakeのリターンである「試験醸造酒」からメインプロダクトを決めるアンケート企画など、応援してくださるみなさんと一緒にブランドを育てていきたいと考えています。

僕たちがつくる福島産の地酒を介して、お酒と人、人と人とが醸し合う、あたらしい CRAFT SAKE ブランドの最初の一歩を、ぜひ応援してください！

※手にしている日本酒はそれぞれの修行先でつくったものです。（左：阿部酒造 「圃場別シリーズ 赤田」、右：佐々木酒造店「宝船浪の音 ヒトメボレ90」）

リターンの紹介

今回のMakuakeで応援いただくお金は、あたらしくつくる酒蔵の設備投資のために使う予定です。そこで最初につくる試験醸造酒を、リターンとしてお届けします！

【Makuake限定】試験醸造酒飲み比べセット（500ml/本×2種類）

それぞれ異なるホップを使用したお酒を2種類お届けします。

試験醸造酒タイプAとBは「ホップ違い」。日本酒にホップを加えた伝統製法（花酛）をベースとしながら異なるホップを付加し、味と香りの違いを表現します。

日本酒（米）のクリアな甘みと旨みに、ビール（ホップ）の鮮烈な苦味と香りが絶妙なバランスで調和したとき、あたらしく衝撃的でありつつも、先人が目指した味が生み出されるのではないかとワクワクしています！

今回の2種のうち、どちらがおいしいかアンケートを行うことで、今後のメインプロダクトを決めていく企画も実施します。

ホップを使ったお酒（花酛）とは

僕たちがこれからつくるお酒は、厳密に定義すると「清酒（いわゆる日本酒）」ではなく、「その他の醸造酒」にあたります。清酒とは、米、米こうじを原料とし、漉したお酒のことで、「その他の醸造酒」というジャンルでは、発酵過程で上記以外の指定の副原料を使うことができます。

「昔の酒づくりはもっと自由だったし、これからも自由な方が良い」という思いから、様々な副原料を使って自由な醸造スタイルを追求していきます。

今回のリターンとなるホップを使ったお酒は、東北の一部地域に伝わっていたとされる伝統製法に基づいたものです。

その製法は「花酛（はなもと）」と呼ばれ、ビールにも使用されるホップの防腐効果を発酵初期に利用するという大変理にかなった製法。しかしながら、各家庭でのどぶろくの製造が禁止されて以降、ほとんどつくられなくなってしまいました。

今でもホップを使用した花酛をメインに製造している酒蔵は存在しないため、試行錯誤をしながら味を追求していきたいと思っています。

酒づくりは人生を賭けるべき「美しい」仕事

改めまして、今回のプロジェクトを企画しているhaccoba 代表の佐藤太亮（たいすけ）です。僕は、酒蔵の息子でもなく、酒づくりとは無縁の経歴。そんな僕が、なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか。酒づくりに惚れ込むまでの経緯をお話します。

僕が酒づくりに興味を持ったきっかけは、大学時代に働いていた飲食店でした。そのお店は日本酒にかなりこだわりがあり、味わう日本酒のたのしさを知りました。それがきっかけで、石川県で酒づくりの現場を見学させてもらい、いつか自分も取り組めたらと思うようになりました。

発酵の工程を必要とする日本酒は、大部分が微生物によってつくられています。人間ができることは、それらが心地よく働ける環境をつくること。寸分違わない配合やつくり方をしても、二度と同じお酒はつくれません。そんなお酒が持つ刹那さや尊さに僕は「美しさ」を感じました。

当時はお酒をつくることまでは考えておらず、一度就職。それぞれの価値観に合った生き方、働き方を支援していく中で、自分自身は何を成し遂げたいのか考えるようになりました。

そして、自分の感覚に素直になるにつれて、大学時代に感じた「酒づくり」という美しい仕事に人生を賭けて取り組みたいという思うようになりました。

今までの仕事も酒づくりも、どちらもやりたいことでした。しかし、自分の情熱を注げる酒づくりをやりきりたいと思い独立。新潟にある「阿部酒造」で、酒づくりの基礎を修行しました。ゼロからの酒蔵づくりに挑戦するため、最初は荒削りかもしれませんが、毎年の成長を見守っていただけるとうれしいです。

なぜ南相馬市小高区を選んだのか

酒づくりの場所を選ぶとき、大事にしたのはその場所が持つ意味。

味の追求はもちろんしていきますが、この場所で酒づくりをしていくことで、社会への「問い」を投げかけられる存在でありたいと思っています。

小高区は、原発事故による避難指示区域に指定され、人口がゼロになったまち。今では徐々に交通機関や商店が戻り、人々の営みが再開され始めていますが、風評や人口が減ったことなどによる課題は山積みです。一方で見方を変えれば、ゼロからのまちづくりにチャレンジできる、世界的に見てもまれに見る最先端な場所でもあります。

地域の方や訪れる方にとって、酒蔵が「新しいコミュニティ」の一つになること。
地域外の方にとって、お酒が「社会課題へ思いを馳せるツール」になること。
それが僕たちが目指している在り方です。

更には、僕の誕生日が3月11日であることや、妻の実家が福島で家業を営んでいること、Next Commons Lab 南相馬の和田さんに出会ったことなど、さまざまなご縁が重なり、小高で酒蔵をひらくことを決めました。

お酒というカジュアルな接点から、今なお続く社会課題に思いを馳せるきっかけをつくりたいと思っています。

今回関わるメンバーの紹介

立川哲之（haccoba）

太亮さんと同じく、haccoba でお酒をつくる立川です。僕が日本酒を好きになったきっかけは、学生時代に震災ボランティアで行った陸前高田市でのお祭りでした。地元のおじさんに「おらがまちの酒、世界一うめぇから飲めぇ」と言われて飲んだ日本酒が本当においしかったんです。そこで日本酒に対するイメージが180度変わりました。

一度東京で就職もしたのですが、日本酒に関わる仕事をしたいという気持ちが抑えきれず、宮城の佐々木酒造店で3年間修行をしながら、日本中の酒蔵を巡っていました。「いつか福島で酒蔵をつくりたい」── 学生時代からずっと漠然と考えていた中、太亮さんのアツい思いが綴られた note を読んで、「これだ！」と心が震えたのを覚えています。

このプロジェクトを通して、ひたすらおいしいお酒をみなさんにお届けしたいです。

佐藤みずき（haccoba）

haccoba では、デザインや店舗設計などを外部の方々と協力して進めたり、酒づくり以外をメインで担当します。実家が家業を営んでいることもあり、いつか夫婦で事業をはじめられたらと思っていました。のちに太亮さんと出会い、お酒に対する熱い思いを知り、一緒に酒蔵をつくることを決意しました。

私は今まで、プロダクトの販売・接客や、ウェブサービスの体験設計をする仕事をしてきました。これからは、「お酒」というプロダクトを介して、その周りにコミュニティをどうつくっていくか、これまでの経験をもとに一気通貫して考えられるところにワクワクしています。

みなさんへのメッセージ

お酒を軸に事業を展開する上で、商品としてのお酒の質は当たり前に追求しようと思っています。当面の目標は、飲む人に「圧倒的においしい」と思ってもらえるお酒をつくること。

僕たちの酒蔵は、一般的な酒蔵と比べるとかなり小規模です。それは逆に、小回りが利きやすいということでもあります。だからこそ何度も挑戦して味を追求し、お酒のおいしさ、たのしさの可能性を広げたいです。そして何より、その思いに共感してくれる仲間とつながり、一緒に酒蔵を育てていけたらうれしいです。

最初にも書きましたが改めて、お酒が好きな人はもちろん、普段は日本酒をあまり飲まない人にもたのしんでもらえたら、僕たちが新規参入してお酒をつくる意味があると思っています。

ホップを使ったあたらしくも伝統的なお酒をはじめ、僕たちがつくるお酒を世代を越えてたのしんでいただけたら何よりです。

小高での挑戦をあたたかく見守ってください！よろしくお願いします！

haccoba 代表 佐藤太亮

酒蔵オープンまでのスケジュール

・2020年10月頃：築40年を超える民家のリノベーションを開始します

・2020年12月頃：設備の搬入を行います

・2021年 1月頃：併設バーをプレオープンします

・2021年 2月頃：酒蔵をオープンし、醸造開始します

※酒類製造免許を取得した後の醸造開始となりますので、時期が前後する可能性があります

関係者からの応援コメント

和田智行さん（Next Commons Lab 南相馬）

haccoba の起業支援をしている Next Commons Lab 南相馬の和田です。私の地元の小高は、一度人口がゼロになったまち。地元に帰る人をふやすためのビジネスアイデアのひとつに「お酒」がありました。お酒は、コミュニティの中心になりえるツールだと思います。お酒を通じた地域コミュニティもつくれたらと思っていたところ、タイミングよく太亮さんに出会い、その熱意を聞かせてくれました。小高産の地酒が置いてある飲食店がこのまちに増える未来が、今からたのしみです。

阿部裕太さん（阿部酒造 6代目蔵元）

太亮くんの酒蔵修行を担当した、新潟にある阿部酒造の製造責任者の阿部裕太です。「自分で酒蔵を立ち上げたい。でも自分は酒づくりがわからないから自分が好きなお酒を造っている酒蔵で学びたい、酒づくりが止まる閑散期でもいいから全てを吸収させて欲しい」と履歴書付のメッセージをもらったのは忘れられません。当社のREGULUSを気に入ってくれていました。うちの蔵では人数が少ないため、全ての業務を新人にもお願いしています。彼の意欲的な姿勢もあり、最終的には自分でレシピから考えたお酒を一本醸してもらいました。１年間という短い時間でしたが、彼に伝えられることは全部伝えました。彼のアイディアと人柄で福島の地で楽しいコミュニティをつくってくれると思います。太亮なりの圧倒的にうまい酒を期待しています。

佐々木洋さん（佐々木酒造店 5代目蔵元）

立川くんが3年に渡り酒づくりをしていた宮城県にある佐々木酒造店の佐々木洋です。「福島の復興失くして日本の再生はない」と考えている自分にとって、福島県南相馬市小高に新たな酒蔵をつくろうとする立川くんの挑戦に大きなエールを送りたい！「全国酒蔵巡り」を継続しながらこの新たなミッションに取り組むことになりますが、佐々木酒造店で酒づくりをしながらも精力的に活動し、様々な事業を成功させ続けてきた彼だからこそ、小高での酒づくりでも信念を貫き通した旨酒を醸してくれると信じております。「日本各地の地域の職を持続性のある人気の職にする」こと、「生きたい場所で、やりたいことができる社会をつくる」こと。そう自らの活動目的を掲げてきた立川哲之の新しい試みにみなさんの力をお与え下さい。

Special Thanks

・平野太一さん（編集、写真）：https://note.com/yriica

・加藤匡毅さん/ Puddle Inc.（建築デザイン）：http://puddle.co.jp/

・齋藤智仁さん/ summit（ブランドデザイン）：https://www.summit-saito.com/