日本には知られていない「路」がたくさん

どうしてトヨタが関わるのか

どうしてトヨタが御朱印帳を？そう思われる方は多いかもしれません。
実はトヨタはクルマをつくっているだけではなく、いまモビリティ・カンパニーへの変革へ向けて「移動価値の拡張」を目指している会社です。

人やモノが移動することで、生まれる価値をもっと大きくしていきたい。たどり着いたひとつのアイデアが、まだ知られていない「路(ミチ)」に光を当てていくという活動でした。

日本の「路」を巡る御朱印帳を

日本には、お遍路やおかげまいり(お伊勢参り)、スタンプラリー、推しの聖地巡礼など。移動をしながらその土地で紡がれた歴史やストーリーを感じる習慣、すなわち「路を巡る文化」が根付いていると考えています。

御朱印帳はそんな文化を代表し、今なおたくさんの人に愛されるもの。今回、私たちがみなさんと一緒に創りたいのは、そんな日本の「路」を巡るストーリー型の御朱印帳です。

プロジェクトのきっかけ

運命的な２つの出逢い

そのような経緯で走り出したトヨタチームも、御朱印帳については全くの素人。最初は神社仏閣の専門家の方々にお話を伺い、その歴史や課題について勉強をさせていただく毎日でした。

ある日、その中の専門家から「倭姫命(ヤマトヒメノミコト)の物語はどう？」とアドバイスをいただいたのをきっかけに、出会ったのが、現役で神職をされている川村一代さん。

　　　　　　　 　川村さんと著書「元伊勢・倭姫命を訪ねて」（撮影：竹村 公太）

川村さんは文筆家でもあり、昨年10月には倭姫命についての書籍を出版された、まさに倭姫命を推してやまない専門家である大ファン。まだあまり知られていない、倭姫命の物語をもっと多くの人に知ってもらおうと、様々な活動をされていたところでした。

製作委員会としての想い

川村さんの力強いご協力も得てようやく進み始めたプロジェクトは、取材で三重や奈良などに何度も赴くなかで、いつの間にか多くの方々にサポートをいただき、現在の製作委員会の形になることができました。

我々の想いはひとつ、
「この路を、このストーリーを、もっと多くの人に知ってほしい！」

伊勢の始まり、お姫様が巡った路の物語

　　　　　　　　　　　　　　　矢沢弦月「皇大神宮奉祀」国史絵画・神宮徴古館蔵

倭姫命(ヤマトヒメノミコト)とは

倭姫命は古事記や日本書紀に登場する第十一代垂仁天皇の皇女で、今から約2,000年前に現在の伊勢神宮内宮の地を探しもとめたとされる人物です。当時、倭姫命は現在の奈良である大和の国から、滋賀、岐阜、愛知、三重の各地でお祀りを試みられ、内宮の地に至ります。現代でもお祀りをした土地は比定地とされ、各地の神社に痕跡が残っている場所も多くあります。

今回は「巡る」をキーワードに、御朱印帳のコンセプトを倭姫命が辿ったルートとし、それぞれの神社が記された御朱印の台紙に加え、各地の由来が記されたルートMAPを作成いたしました。みなさまが当時のルートを辿りながら思いを馳せ、御朱印を思い出として記憶し、自分の物語を編む。そんなコンセプトを詰め込んだ一冊となっています。

　　　　　　　　　　　　　　　 倭姫宮（撮影：倭姫命の御朱印めぐり製作委員会）

最上級の伊勢和紙を表紙に使用

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　和紙の繊維（提供：大豐和紙工業）

伊勢和紙とは

日本で大豐和紙工業のみが製造する「伊勢和紙」は神宮御用紙とされ、現在に至るまで伊勢神宮の御神札奉製に用いられています。和紙には天然の原料のみを使用し、滲み止めや表面処理は一切施していません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　 　製造される伊勢和紙（提供：大豐和紙工業）

伊勢和紙の最上級「浄ら芭蕉」

御朱印帳の表紙には、伊勢和紙の中で最もグレードの高い「浄ら芭蕉」を使用。希少な植物であるバショウを原料につくられる特別な和紙であり、その目の緻密さと美しい白色を特徴としています。伊勢和紙独自の技術によってカラー印刷に対応しており、今回の鮮やかなデザインを表現するため、表紙へと贅沢に用いました。

　　　　　　　　　　　　　　　　 　伊勢和紙「浄ら芭蕉」（提供：大豐和紙工業）

特殊製本による丁寧な仕上げ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　特殊製本作業（提供：博勝堂）

特殊製本職人によって紡がれる和紙

製本は、御朱印帳の製本実績を300社以上有する博勝堂へ依頼。
表紙に箔押しをあしらい、職人による丁寧な手仕事で、繊細な伊勢和紙と台紙を一つ一つ紡いでいきます。表紙の粗面（ザラザラ側）と台紙の滑面（ツルツル側）にも違いを感じながら、それぞれの質感を味わってみてください。

御朱印帳の仕様・詳細

　　　　　　　　　伊勢を望む青々しい山々を表現したデザイン（撮影：竹村 公太）

今回の御朱印帳にはそれぞれの土地の由来とガイドマップを掲載し、みなさんが当時のルートに想いを馳せながら、御朱印を思い出として記憶するコンセプトを詰め込みました。トヨタならでは遊び心も織り込んでいるので、是非日本の隠れた魅力を再発見する旅路を楽しんでいただきたいです。
※5/5「倭姫宮 春の大祭」にて奉納いたしました！

特徴①：これだけで巡れるルートMAP

　　　　　　　　　　　　　　　　 比定地を記したルートMAP（撮影：竹村 公太）

当時の地形になぞらえ、みなさまに巡っていただくルートをMAP化。
約2,000年前に倭姫命が巡ったであろう御巡幸路に想いを馳せながら、思い思いに巡り、その土地にしかない魅力を感じてください。（巡る順番は自由で構いません！）

　　　　　　　　　　　比定地の御由緒や御朱印の受け方も掲載（撮影：竹村 公太）

特徴②：期間限定Webアプリ（12月末まで公開！）

倭姫命が巡った世界により入り込んでいただくために、倭姫命の御朱印巡り御朱印帳オリジナルのWebアプリ「巡 -めぐり-」を開発いたしました。

御朱印帳には載せきれなかった情報や関連する場所、チェックイン、参拝アルバム機能などをアプリ上で期間限定配信いたします。みなさんの御朱印巡りが少しでも実りあるものになりますように！御朱印帳と併せご活用ください。

※Webアプリへのアクセスは御朱印帳同梱のQRコードからお願いします
※公開期間は2024年12月末までを予定しております

特徴③：クリアビニールカバー付き

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　繊細な伊勢和紙を保護するビニールカバー

今回製作している御朱印帳は、一般的に印刷面で用いる滑面（ツルツル側）ではなく、和紙ならでの質感を尊重した粗面（ザラザラ側）を使用しています。
繊細な質感を保護するためににビニールカバーを同梱しておりますので、お好みでご活用ください。

スケジュール

予約受付は7/1まで、7月下旬以降に順次発送

5/22(水)より応援予約を受け付け、7/1(月)18時に締切とさせていただきます。
締切後に御朱印帳の製作を開始し、7月下旬以降の順次発送を見込んでおります。御朱印帳がお手元に届いた方はデジタル御朱印も携え、いざ御巡行の旅へ！

地域コミュニティの担い手、神社の課題

人口減による文化、コミュニティの継承危機

また、日本の地方では人口減少による地域の衰退が大きな課題となっています。
過疎化が進むと地域のインフラが失われ、特に公共交通機関は大きな打撃を受けています。地域が分断されると関係人口の減少にもつながり、自治機能が衰退することで安心して日常生活を送るうえでの懸念も生じてきます。

何よりその土地で何百年も大切にされてきた文化が失われてしまうのは日本の社会にとっても大きな損失となります。文化があるからこそ人が集い、交流が生まれ、相互理解につながる。近年謳われる、関係人口や交流人口の面でも大きなテーマです。

これまで神社は地域社会のコミュニティハブとして大きな役割を担ってきました。今でも初詣で一年を祈願し、お守りを携え生活に勤しみ、お祭りでは神輿や山車が街を駆け巡り、夜店に浸る。これらはいずれも神社に由来があり、人々はそれぞれのイベントのたびに集い、人同士が触れ合いながら文化を継承しています。

新たな文化の継承へ

それが今では、文化の守り人である地域住民(氏子)の減少が続き、神社の運営を担う神職さんも他人事ではありません。日本に神社は約9万社あるといわれますが、近年は一人の宮司さんが数社を掛け持ちすることもよくあるそうです。

我々は過疎化が進む神社がある地域以外の方々にこれらの課題を知っていただくためにも、回遊を促す御朱印帳づくりが、その土地土地に足を運んでいただく広義の意味での氏子(ファン)づくりへ寄与するのではないかと考えています。

2033年の神宮式年遷宮へ向け、10年という節目を迎える中でも、日本の地域や文化を見つめなおす新たなきっかけになるのではないでしょうか。

実行者紹介

「倭姫命の御朱印巡り」製作委員会

トヨタ自動車株式会社の鬼頭と申します。チームを代表してご挨拶を申し上げます。このたび多くの方々に支えられて「倭姫命の御朱印巡り」御朱印帳を製作することができました。「路」をキーワードに、当社として御朱印帳を製作するという大変チャレンジングな試みでしたが、委員会の推進メンバーとしてご参画いただいた川村様、監修をいただいた皇學館大学の櫻井様、また多くの関係者の方々に支えられどうにか今日の運びとなりました。この場をかりて御礼申し上げます。

今回製作した御朱印帳には、日本の原風景や文化を身近に感じていただける仕掛けをいくつも盛り込んでいます。使うほどに味が出る和紙の質感、ストーリーを深掘りできるガイド、スマホを用いたチェックインやアルバム機能など。みなさまの愛着が湧くコンテンツが盛りだくさんなので、是非いにしえの人が巡ったであろう路を辿りながら、新しい御朱印体験を楽しんでください。

＜プロジェクト推進＞
トヨタ自動車株式会社　新事業企画部　　鬼頭 司
神職、ライター、大学非常勤講師　　川村 一代
メンバー　　成田、岸本

＜監修＞
皇學館大学名誉教授、NPO法人社叢学会理事長　　櫻井 治男

＜デジタル回遊アプリ開発＞
トヨタ自動車株式会社　デジタル変革推進室
デジタルイノベーションガレージ（DIG）Pitbullチーム

ご協力をいただいた皆様

神宮司庁
神社本庁
大神神社
倭姫宮御杖代奉賛会　　村田 典子さま
阿紀神社　　浦岡 英夫さま
宇陀市　　　森本 陽子さま
大豐和紙工業株式会社　　中北 喜亮さま
株式会社博勝堂　　渡邊 剛さま
フォトグラファー　　竹村 公太さま