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その日、彼が待ち合わせに指定したのは、意外な場所。「増上寺の境内」

満開の桜の下で、私は大きく息を吸い込んだ。

ここは、天下泰平を願った徳川家康の菩提寺。

まるで巨大なロウソクのような東京タワーを仰ぎ見ながら、大量の「？」が頭の中で渦を巻いた。

「なぜ、彼はこの場所を選んだのか？」
「ここから、どこへ連れていかれるのか？」「夕食はどこでするのか？」

「少し寒いね。」

背後から現れた彼は、手慣れた感じで、

私の肩に手を置くと、LOEWEのトレンチコートの襟を立てた。

芝公園の中をぐんぐん進んで行く。

私は知っている。この先には、店などない。あるはずがない。

しかし、彼は、しっかりとした足取りで増上寺の境内を抜け、芝東照宮の傍らを通り抜けた。

私は今、パワースポットの中にいる。

江戸初期、陰陽道を修めた南光坊天海は、関東平野に江戸のマスタープランを練り上げた。もちろんテーマは「天下泰平」

鬼門となる方角に、上野寛永寺を置き、裏鬼門となる方角に増上寺を置いた。

さらに、不安は加速度的に大きくなっていく。

私たちが歩いているのは、芝公園のど真ん中だ。

東京タワーを見上げる恋人たちは、芝生に横たわり見つめあっている。

私は、どこへ連れていかれるのだろうか？

確かに彼は、この先で食事をするといっている。

間違いなく、ここは芝公園という公共の施設だ。

「着いた。これは隈研吾さんが作ったんだ。」

芝公園の中に忽然と建つ文化遺産クラスの建築物。

つまり、ここは私有地でこの建物は、世界的な建築家・隈研吾氏の作品だという。

奇跡のような光景が、私の眼前にある。

「ちょっと待って、状況を整理させて・・・」

私は、ネットたたいた。

隈研吾氏は、国立競技場や歌舞伎座、根津美術館も手掛ける世界的な建築家だ。

この芝の家は、四角い箱状の建築を、公園の林となじませるために、生物の皮膚のようなやわらかな外壁を試みた。

スチールのメッシュを3重に重ね、そこにと接着剤を混入した土を吹き付けることで、奥行き感と陰影のあるやわらかな外壁を作り上げることができた。

この外壁を実現した左官職人は、挾土秀平氏。彼もビックネームである。

総理公邸、洞爺湖サミット会議やNHK大河ドラマ『真田丸』の題字と「日本の顔」となる場所に、挾土さん作品が用いられている。

不動産情報を覗くと、この物件は、かつて10億円以上で売られていたこともあるようだ。

まさに「王様の城」だ。

「ここは、完全会員制。さあ、中に入って」

短時間で驚きが洪水のように襲ってきたので、言葉がでない。

彼が、壁の前に建つと、隠し扉が開いた。

その先には・・・信じられない世界が広がっていた。

カウンターの小窓から見える借景には、芝公園の梅。
ここは、江戸時代、白い梅が広がる風景を「雪」にたとえ、「銀世界」と名がつけられた。

ふと、振り返るとそこにあるのは、周囲の風景を映す水面。
さざ波は、反射する灯りを瞬かせる。
まるで、自分が名高い日本庭園の中にいるような錯覚に陥る。

（※一部、見えない席もございます。）

土壁も美しい。思わず私が、壁を触ると・・・

「そちらも、挾土秀平さんが作ったものです。」

料理人の市村さんが、穏やかな口調で教えてくれた。

挾土秀平氏は、室内にも竹の葉と雲母とを組み合わせた天井、ナラの灰を塗り込んだ壁など、新しい素材になる左官を創造した。

個室に入ると、せせらぎが聞こえる。

見れば、庭園の池が正面に構えている。せせらぐ水面も上に自分たちがいるようだ。
寝殿造りの釣り殿を彷彿とさせた。

「ゴージャス」ではなく、「気品」を感じた。
つい1時間前までオフィスにいたことを考えれば、ここは、まさに異空間だ。

それは、茶室を思わせる雰囲気をもっていた。

「お腹がペコペコだ。

ここは、肉割烹の店、肉を主体とした和食を食べさせてくれる。」

信じられない状況に唖然としていた私も、ようやく冷静を取り戻した。

「夢の中にいるみたいだけど・・・お腹は減ったわ。」

（スタンダードコース内容）

【先付け】

【前菜 4種】牛の握り、ローストビーフ、季節の野菜、季節の魚介類など。
その日の仕入れでその都度決まります。

【お造り 3種】魚、手巻き寿司、タルタル、牛刺しなど。

季節のお造りをお出しします。生肉の許認可も取っているので、安心安全な生肉をウニやキャビアと共に召し上がってもらえます。

また、赤身のたたきなど、肉本来の美味しさを存分に楽しんでもらいます。

「体が、馴染んできたところで・・・本番です。」

「最高のシチュエーションに、最高の食事。間違いなく私は今、世界一幸せ・・・」

【焼物】 焼き魚かお肉の炙りなど。

【煮物】 すき焼き、しゃぶしゃぶなど

【強肴】 ステーキ

「尾崎牛」といえば、牛肉界の異端児と呼ばれる尾崎宗春さんによって作り出されたブランド牛。出荷量が極端に少なくプロが取り合いになるほど。

丁寧に火入れされた素材からは、心躍るような香りが沸き立ち、噛み締めるほどに食欲が増す。

改めて幸せを噛み締める。

【ご飯】 土鍋ご飯、汁物、香物

残ったらお土産でお持ち帰り出来ます

【デザート】アイス

VIPコースでは、フカヒレすっぽんスープや煮物をもう一品、シャトーブリアンなど厳選された料理をご提供致します。

「もう、お腹いっぱい！食べられない。幸せが体に充満している。」

料理人の市村さんが、お茶を出しながら・・・

「その時の材料とひらめきでメニューは決まってくるので、決めていません。次も来てくださいね。」

私は彼を覗き込んだ・・・

「分かった。また来よう！

VIP会員だけなんだけど、この屋上でBBQもできるんだって！」

「やった！！！！」私は、年甲斐もなく心が弾んだ。

【さらに！特典】「年会費」「更新料」が無料

全てのリターンを対象に会員様は年会費や更新料等、入会後の費用はお店が続く限り、一切かかりません。

次回の会員募集は未定となっており、今回限りの可能性もございます。

この特別な機会を是非お見逃しないようお願いいたします。

（市村堅太郎 プロフィール）

エコール辻調理師専門学校卒業
銀座 割烹長山入社
銀座割烹 宵待草 料理長
銀座割烹 あて 独立
現在に至る

（店舗情報）

肉割烹 礼

住所：〒105-0011 東京都港区芝公園４丁目８−１２
営業時間：17時30分〜23時
定休日：日曜日