創業158年、滋賀県高島市に蔵を構える上原酒造が、毎年恒例の「初呑み切り」にご自宅から好きなタイミングで参加できる日本酒セットをお送りします。

初呑み切りは、毎年冬に造ったお酒をどのように熟成しているか、また変質していないかをチェックする蔵元にとって重要な行事です。

元々、蔵の者達だけでやっていたこの行事ですが、一般のお客様の意見を酒造りに取り入れたいと十数年前より一般公開をし、最近では300名近いお客様にご参加いただいております。

しかし、今年はコロナ禍のため、一般のお客様を招くことはできません。とはいえ、実際に飲まれるお客様の意見は大変重要ですので、この場をお借りして今年のお酒だけでも味を見ていただきたいと今回のプロジェクトを企画しました。

上原酒造について

はじめまして。不老泉というお酒を醸造している上原酒造・代表の上原績と申します。

私たちの蔵は、滋賀県の西部、琵琶湖北西に位置します。

とめどなく湧き流れる比良山系の伏流水に、琵琶湖の豊かな自然を一心に受け、文久2年（1862年）より158年間、この地で酒造りをしてきました。

私たちの酒造りの特徴は、目に見えない野生の天然蔵付酵母で仕込みを行う山廃仕込みに、無理な圧をかけずに時間をかけて綺麗な部分だけを取る木槽天秤しぼりにあります。

非常に手間と時間がかかるため、時代にそぐわないと言われているこの2つの手法を取り入れ追い求めるのは、手間ひまかけた本物の酒です。

「旨い酒を造りたい」というのは、どこの酒蔵も同じように思うことでしょう。

しかし、旨い酒はそれを飲む人の数だけあるもの。そこからどういう酒をつくれるかが、酒蔵の個性となります。

上原酒造の造る「旨い酒」は、濃醇で太く、酸の旨みまで感じられる酒です。

昨今の主流である、水のようなさらっとした飲み口のお酒とはかなり風味が異なりますが、一部の日本酒愛好家の皆様に支えられ158年間この味でやってまいりました。

水に導かれ醸す、山廃仕込み

山廃仕込みとは、日本酒造りに必要な乳酸菌を一から育てる生酛系酒母から派生したもので、野生の天然蔵付酵母で仕込みを行う手法のことをいいます。

当蔵では、1990年頃、山廃仕込みを復活させました。

しかし当時は、淡麗辛口が全盛の時代です。複雑な味わいや香りを感じる酒質になりやすい昔ながらのこの手法は、当時ほとんどの人が見向きもしませんでした。

なぜ、当蔵がそのようなタイミングで山廃仕込みを復活させたのか。

それは、その年に来た杜氏が、蔵の片すみにある比良山系の伏流水が湧き流れる水場を確認したときのことです。

『ここの水は軟水なので酵母の栄養源が少ない。でも、生存競争を生き抜いてきた野生の強い蔵付酵母なら、きっとうまく発酵し続けてくれるはず』という見立てをしたことがきっかけだったと聞いています。

もとより、人は酒を造る条件を整えることはできても、酒そのものを醸すことはできません。

土地の水に合い、蔵の天然菌が醸す酒。酒は、人ではなく土地が造るというのが当蔵の考えでもあります。

水の性質が酒蔵の方向性をも決定づける。山廃仕込ならではの酒質は今では当蔵の基盤となるものになりました。

時代と逆行する酒造り・木槽天秤しぼり

当蔵が導入しています「木槽天秤（きぶねてんびん）しぼり」とは、木槽の中に醪（もろみ）の入った袋を詰め込み、石の重を利用して天秤棒と木のこしきで加圧しながらお酒をしぼる、古くから行われていた方法です。

これに要する手間・技術・器具の保管、そして効率の問題により、今では木槽天秤しぼりを使用する蔵元はほとんどなくなりました。

一般的な酒蔵では機械を使って1日でしぼりきってしまいますが、木槽天秤しぼりの場合は、天秤棒に吊るされた1トンの石の重みでじっくりと2日間半かけて行います。

とはいえ、それだけ時間をかけても機械と比べて85～90％程度のみしかしぼることはできません。

しかし、こうすることでしぼりの最初と最後の雑味のある部分を分けて、「中汲み（なかぐみ）」と呼ばれるもっともやわらかくて旨みのある部分を取ることができます。

つまり、とれる量こそ少ないですが「美味しいところだけ」を凝縮させた酒を造ることができるのです。

木桶でより深みのある酒に

仕込みに使う桶は一部、昔ながらの木桶を使っています。

管理のしやすい鉄製のタンクと違って、木桶は保温能力が高く、発酵による温度調整が非常にが大変です。

しかし手間がかかる分、出来上がった酒は、心地よく木の香りを感じることができ、木桶独特の深みのある酒になります。

こうして、半世紀以上途絶えていた古きよき時代の酒造り文化、私たちが忘れかけていた懐かしい味を復活させた酒が醸し出されました。

蔵にずらりと並ぶ、木槽天秤しぼりに木製のこしき、木桶。

これらはどれも100年後にはどこかの博物館に陳列されていてもおかしくないようなものばかりです。

それらの道具に加え、使っているのは目に見えない野生の天然蔵付酵母です。

今となってはすべてにおいて時代の流れと逆行しまいましたが…..

時間と手間をかけた丁寧な酒づくりから醸される「濃醇で太く、酸の旨みまで感じられる酒」こそが、当蔵の個性といえる旨い酒となりました。

「初呑み切り」とは？

私たちは、毎年７月の終わりに「初呑み切り」という仕事をします。

初呑み切りとは、冬に仕込んだタンクに貯蔵している酒を、夏に味の熟成具合や変調をきたしていないかをきき酒して判断をする行事のことです。

杜氏に蔵人・営業・事務員まで、蔵の者全員できき酒を行い、その年に仕込んだお酒について話し合いながら、秋からの販売について全員で意見を交換するという非常に大事な会となります。

古くから、蔵内部でやっていたこの行事ですが、当蔵では十数年前よりこの「初呑み切り」を一般公開するようになりました。

最初こそ、一部の親しいお客様を招待し、生の声を聞かせていただいていましたが、続けていくうちに、年々お客様が増え1日では収まりきらなくなるほど反響をいただくように….！

これまでは、タンク貯蔵酒だけをきき酒しておりましたが、お客様が増えるにつれ、熟成中で未出荷の商品や出荷中の商品も味を見ていただこうと一緒に並べ るようになり、最近では毎年55種類前後のお酒を並べております。

嬉しいことに、近年では、日本酒マニアまではいかなくとも、日本酒に興味がある一般のお客様もいらっしゃるようになり、県内外より2日間で300名ものお客様がお出でになるまでに成長しました。

しかし大きなイベントになったとはいえ、私たちにとっての初呑み切りは、酒造りの一環として行っている大切な行事のひとつです。

一般的な蔵開きとは違い、酒蔵と日本酒好きの皆さんが一体となって、真剣にその年の酒の具合をきき酒してもらいます。

そうしていただいた感想により、今後の酒造りの方針だけでなく、秋から発売する「ひやおろし」のタンクまでも決定します。

蔵にとって、欠かせない大変ありがたい行事なのです。

今年の初呑み切りにご自宅から参加しませんか

実は、毎年7月に行っている初呑み切りですが、コロナウイルスの影響により、今年はまだ行えておりません。

もちろん、蔵にとって欠かせない行事の一環として関係者のみの初呑み切りは行いますが、一般のお客様を招くことは非常に厳しいと判断致しました。

しかし、中止にしようと判断したものの、時期が近づくにつれお問合せや、我々を気遣う温かいメッセージが届くように、、。

こんなにも楽しみにしてくださっている方々がいることに驚きつつも、スタッフ一同とても嬉しく読ませていただきました。

そのうちに、我々だけで行うのは違うのではという気持ちが募り蔵内で話し合ったところ、今年の初呑み切りは、皆さんのご自宅へ酒をお送りすることで蔵に来ずとも初呑み切りに参加できるようにしようと決まりました。

お送りするのは、180mlの小瓶に詰め替えた16種類のお酒と、お酒の評価をいただく返信用はがきです。

本来なら皆様にきき酒していただくはずであった、タンク貯蔵や瓶詰されて冷蔵庫で熟成中の未出荷の商品を組み合わせてお送りします。

評価の返送は必須ではありませんが、タンク貯蔵のお酒に対していただいた評価は秋からのひやおろしの選定に関しまして大変参考になりますので、皆様の率直なご意見を戴けると幸いです。

評価を返送くださった方の中から抽選で5名の方に今秋のひやおろしをお送り致します！

お酒の種類について

リターンは全部で4種類

■お酒はすべて「180ml」です。

■クール便でお送りします、到着後は冷蔵庫で保管ください。

■各セットに大小猪口を１個ずつお付けします。

■2020年11月末頃発送

①タンク貯蔵火入酒 6本セット

価格：3,300円

②瓶貯蔵生原酒 10本セット

価格：5,500円

③全種類 16本セット（①＋②）

・7,150円

・上記（タンク貯蔵火入酒＋瓶貯蔵生原酒）全種類

④全種類 32本セット（①＋②×2）

・ 14,300 円

・上記（タンク貯蔵火入酒＋瓶貯蔵生原酒）全種類×2

きき酒をお家でお愉しみください！

（▲試飲会で当時と一緒に）

コロナウイルスという未曾有の事態により、本来の初呑み切りはできなくなってしまいました。

本来であれば、常連の皆様だけにご案内をお送りしようかとも考えましたが、せっかくやるのであればより多くの日本酒好きの皆様にお届けできないかと今回のプロジェクトを立ち上げました。

この様に、ご自宅にお届けして品評していただくというのは、私たちにとって初めての挑戦です。

皆様からいただいた、ご意見は今後の酒づくり、そして今秋に発売するひやおろしのタンクを決めるための重要な指針となります。

そして、なにより、この“きき酒体験”が、多少なりとも皆様にとってのお家時間の楽しみになるのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

ぜひ、安心して外出できるときが来ましたら蔵へも遊びに来てください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご支援のほど、どうぞよろしくお願い致します。