プロジェクトについて

「世田谷デニム」(東京世田谷区)は岡山の老舗機屋 岡本テキスタイルが運営するファクトリーチーム。前回のCLONE DENIM PROJECTでは、無駄なものをつくりたくないという思いからオーダーメイドジーンズを製作させていただきました。

その発展として今回は、製品が生まれてから廃棄されるまでを考えたものづくりとして、土に還る服を基本コンセプトに、『5 Pocket Pants』を開発しました。

日常でモノが大量に生産され、残った多くのものが廃棄されるのを横目に見ながら、自分の子供たちの未来を想像すると、未来につながっている自分たちの生活習慣や仕事環境を、一人ひとりが変えていけると自覚して行動していかなければいけないと感じます。それには環境に配慮されたものが増え、それらを大切に使用する心を受け継いでいくことが重要です。

自然の摂理に従った、環境サイクルを破壊しないものを大切に使用することこそが、私たち自身の未来と環境をより良くすることができると信じています。

今回生み出したコンセプト「土に還る服」、そして『5 Pocket Pants』というプロダクトは、そんな未来の第一歩となるものです。

製品紹介

今回のコンセプトモデル『5 Pocket Pants』を作るきっかけになったのは、自社で作成した天然藍染めのデニム生地と世の中に広く受け入れられている従来のジーンズを基に、これからのモノづくりに見合った服作りをしたいという思いでした。

土に還ることを考え天然素材だけの仕上がりに

使用している天然藍染めオーガニックコットンのデニムは、一見すると従来のデニムと同じように見えますが、化学染料の合成インディゴよりも色が落ちにくい上、色が変化する様もくすみが無くピュアな本来のブルーへと変化していきます。天然藍染め特有のオーラを纏ったような浮遊感のある発色が非常に魅力的で、自身の生活スタイルそのままを反映し、シンプルだったアイテムは自分だけのオリジナルアイテムへと成長を楽しむことができます。

（※上写真は５回ほど洗濯したサンプル）

ポケット袋に使用されるスレーキという生地にもオーガニックコットンを使用し、ベルト裏や腰裏にも採用することで肌さわりを優しくしながらもデザイン的な特徴があります。そしてステッチもポリエステルではなく、綿の生成り色のステッチワークにすることですべてが綿素材に統一し、天然素材の経年変化を十分に楽しめながらも洗練された澄んだイメージを作り上げます。

従来のジーンズでは金属のボタンを使用していますが、温もりある木材のボタンを使用し、手が触れる部分に自然を感じられる落ち着きと優しさを生み出しています。

元々持っている様々な機能によって、私たちを心地よく守ってくれることが、天然繊維の特徴です。例えば、綿は通気・吸水性が良く、熱にも強く、洗濯しやすいので汚れを容易に落とせます。人工的な繊維は何かの機能に特化していますが、『5 Pocket Pants』は綿のようなバランスの良い天然繊維を用いることで、１年通して着心地よく設計しているのです。

糸を極力使わないまま実現した、シームレスなデザイン

デザインの特徴として、ポケットのラインからつながったバックヨーク線が立体的に腰を包み込むシームレスな設計を施し、着る人の身体を包み込むようにしています。

デザイン線が横一直線になることで従来のジーンズよりシンプルになり、誰にでも似合うよう仕上げています。

また、本来ならパンツで必要不可欠な脇の縫い目もシームレスにして、肌に当たる縫い代を無くすことにより他にない着心地を実現しています。さらに縫製距離を短縮し使用する糸の量もカットしています。縫い代の倒し方も工夫して、布がほどけないように端をかがるロック始末を施していないことも、糸の使用量を大幅に削減することにつながり、内側の気になるもたつきや肌触りも解消しています。

裾の縫い代は表側に折りあげることで見た目のアクセントを作りつつ、靴に色移りしにくいように仕上げています。

ウエスト調整はジーンズ特有の金具を使用するシンチバックの代わりとして、後ろ両腰にウエスト調整タブを付けました。それによって5cmウエストを絞ることができ、女性特有の腰のラインに合わせて着用しやすいシルエット・サイズに調整できます。ユニセックスでより広い体形をカバーできます。

STYLE

MODEL：178cm 66kg Size C (31inch) 股下78cm 着用

MODEL：171cm 65kg Size C (31inch) 股下71cm 着用

MODEL：160cm 45kg Size C (31inch) 股下78cm 着用

男性が穿いているサイズを後タブでウエストを絞って女性がわざと大きめに着用。

「土に還るデニム」とは

あるがままのモノづくり

全く新しい開発よりも、自分たちが無理なく「今できる手段」の中で知恵を絞り、無駄を省き環境に配慮できるプロダクトを作ろうと決めました。「あるがまま」とは、何かのためだけの特別な素材・製法を選ばず、自然に今この瞬間にあるものを使って時代に求められるプロダクトを届ける姿勢を表しています。

そして、そんな製品作りにおいて、最も大きな特徴の1つが、土に還る天然素材を選んで制作していること。

天然繊維は、地球環境にある動植物から作られたものです。微生物が分解できる素材であり、使用される間から最終的に破棄されるまで、環境を汚すことを極力抑えられます。

使用している天然藍染めのデニムはトルコ産のオーガニックコットンを国内で紡績した糸を使用し、常温染色技術(エコ染色）により環境負荷を軽減させています。ロープ染色という従来のデニムと同じ中心が染まらず白く残っている糸が出来上がるので、デニム特有の色落ちはそのままに楽しむことができます。

また、電力が少なくて済む、昔ながらの力織機で織ることによって密度がありながらも立体的な14オンス近いしっかりとしたデニムを織りあげ、セルヴィッジ生地特有の赤耳部分は桜で染めた淡いピンク色の糸を使用し、染めや織りにできるだけ環境負荷を少ない方法で生地作りをしています。

無駄な廃棄物を出さない、オリジナルの制作体制

『5 Pocket Pants』は、企画から型紙作り、縫製などの現場とのコミュニケーションから管理までを、自社のチームで行っています。様々な服作りに携わった経験と知識、ネットワークによって我々が理想とする、環境にも人にも無駄な負担をかけない今できるあるがままの 生産方法を見出すことで、無駄なコストや設備投資を避けることを可能としました。

その結果、通常のデニムと比較しても2倍以上の価格にもなる天然藍染めのデニムを、大量生産せずとも今回の価格で提供するに至っています。

また、最新の３Dシミュレーターを使用することにより、従来ではたたき台を作っては直しを繰り返してしまう無駄をなくし、ある程度最初から精度の高いサンプル作成を行います。それにより生地や資材の無駄や、時間の圧倒的な短縮を行うことができるので、ゆとりを持った取り組みが可能です。

これを利用して新しい情報発信の方法、イメージづくりに活かせるよう模索を続け、環境に寄り添う活用を見出すことにチャレンジしていきます。

高クオリティと、手頃な価格を両立

海外で安く作るのではなく、日本の技術の継承と発展を基本的に考え、先ずは国内の素材と技術で作り上げることが持続性を考えるうえで一番大切だと考えます。まずは手に取りやすい価格にすることで天然藍染めデニムの日本のクオリティを知ってもらいたい。この地のモノの良さを知り、大切にできる商品を購入してもらう循環を作り出す世の中にしたいという気持ちです。

『5 Pocket Pants』に興味を持って頂きその製法や私たちの考えに触れることで、みなさん一人ひとりの行動と未来が、より良い未来に繋がると信じています。

リターンについて

今回出品しているのは2021年9月頃からオンラインのみで販売する予定の商品の先行受注販売です。そのため正規の値段より安く早くお試しいただくことができます。

●プロジェクト実施：期間2021年4月16日～5月30日まで

●生産期間：2021年6月～7月末

●納品時期目安：2021年8月中旬頃より発送

①The 5 Pocket Pants

今回のコンセプトを象徴させたコンセプトモデルとなります。

一見すると従来のジーンズですが、私たちの考え方を集約させた14オンスのデニムパンツです。

現代の生活に程よくフィットさせたいという想いから検討を重ねたバランスで作り上げた、着まわしやすいベーシックなストレートシルエットは流行に流されずより長く着用いただけるものとして提案しています。

着る人の個性も、自然の摂理も邪魔をせず、やさしい着心地を提供し個々の豊かなライフスタイルに寄り添うことを願って創り上げています。

②Standard Jeans

伝統のジーンズの基本デザインをそのままに、生地やボタン、糸など今回のコンセプトの素材使いをそのまま反映させたベーシックな5ポケットジーンズもご用意しました。

今回の新しい5pocketsとシルエットはほぼ同じで、従来のジーンズと同じデザインのため糸の使用量などは多いですが、今までのジーンズファンの皆様にも素材の良さやコンセプトを肌で感じてほしいという思いで制作しています。新しいデザインに対して苦手な方や、あえて比べるために新しいデザインのものと一緒に購入されても楽しめるかもしれません。今後のオンラインショップでは販売しないので、今回のプロジェクトのみの限定アイテムとなります。

※こちらは後ろウエストにタブは付きません。

サイズ展開

①5Pocket、②Standard Jeansと共に同サイズ展開となります。

※ワンウォッシュした状態で納品します。その状態での寸法となります。

御協力いただいた素材生産の取り組み

●天然藍の染め糸●

協力：坂本デニム株式会社（広島県福山市）

オーガニックコットンを使用した糸に、天然藍を使用したロープ染色を行っています。

設備を大幅に入れ替え、ボイラーを使用しない「エコ染色」により従来の染色に必要な熱や余計な薬剤を使用せず、洗浄効果のある電解水を常温で使用し染色するのが大きな特徴です。

デニム特有のロープ染色に変わりはないので、色落ちの楽しみは損ないません。

また、合成インディゴ（人工染料）と比べ濁りが無く色が清らかな上、色落ちしにくい検査結果が出ています。

昔ながらの手染めでもできない天然藍染めであり、今できる技術で歴史あるデニムの楽しみを継承した生産方法です。

●生地の仕上げ加工「倉敷染」●

協力：コトセン株式会社（岡山県倉敷市）

生地を織りあげたままの状態では安定せず水分を吸収した際の収縮が激しいので、生地には仕上げの整理加工というものを施します。その整理加工に対して、国際的な安全品質基準値をクリアしていることを証明するために「倉敷染」という認定があります。今回使用しているデニム生地は「倉敷染」の認定を受ける整理加工を行っているコトセン株式会社にご協力いただきます。

従来生地の整理加工に関しての品質保証というものは国内ではほとんど行っていません。

単に整理加工の品質を保証するためだけかもしれませんが、素材の真実を伝えるものである大切な取り組みと考え、品質表示に印刷することにしました。決して表立ってはこない取り組みが数々の製品を支えていることをより多くの方々に認知していただき、一つ一つの製品を大切に捉えていくきっかけになりますよう生産背景の情報発信を続けていきます。

※倉敷染は岡山県織物染色工業協同組合の登録商標です

実行者紹介

弊社「岡本テキスタイル」は岡山県井原市のテキスタイルメーカーでありながらも、世田谷のサンプルメーカー「アンジーズ」を運営し、生地から製品までの服作りを手掛けています。今回の本藍デニムなど様々なデニム生地の生産を得意としているため、それを活かすべくブランド「Distance」を立ち上げました。 コレクションブランドの在籍や国内外様々なブランドのOEMを経験したメンバーを中心に、今回の販売やPRまでを行うプロフェッショナルが集まったチームです。一つの製品に対して一貫したアプローチを生み出すことで、シームレスで極力無駄のない取り組みが可能です。

大切にできるモノをより多くし、人もモノも環境も共に在り育ってゆくというのはとてもサスティナブルだと感じます。

是非、肌に感じで頂き皆様の心にあるものと共鳴することができたら幸いです。

資金の使い道

私たちは、「今あるものを、今できる生産体制と今できる販売の方法で」製品をお届けすることをポリシーとしています。

この先、私たちのコンセプトに合うような素材や生産の仕組みが増えていくことは容易に想像できますが、ある程度の速度が必要だとも感じています。そのため、現状のアイデアをより一層コンセプトに沿った深いものに作り上げるための資金として使用させて頂きたいです。例えばボタンの木は、微量ですが耐久性を上げるための加工がまだ環境に負担を与えているため、今後さらにより負担の少ないものへと開発していくなど。そして、こうした服づくりの考え方を、より広められる活動の資金とさせていただきます。