最近は焚き火が大人気。キャンプ場でも焚き火を楽しむ方たちが増えています。
今回はそんな焚き火スト達に、ぜひ知っていただきたいアイテムをご紹介します。

真鍮加工のスペシャリスト、田中金属製作所の職人たちが作り出した真鍮削り出しの火吹き棒「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」です。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」は、金属加工のプロが集まり「自分達が持つ技の全てを注ぎ込む！」という思いで、理想の火吹き棒を作り出しました。理想を実現する為、ブラスのフルビレット(真鍮の削り出し)という贅沢な製法を採用。

「最も良いモノを作ろう」という職人のプライドが結集して生まれた製品です。

焚き火で難しいのが、種火から火を大きくするところ。小さな火に空気を送り込まなければなりません。

顔を近づけて息を吹きかけることもできますが、髪の毛や衣服を焦がす可能性があります。そこで活躍するのが火吹き棒。

効率良く空気を送り込むことができる火吹き棒「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」ならスマートな火起こしが可能です。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」のマウスピースは、美山から連想した三つの山で構成し、そこに24個の穴を開けております。

これが3つの効果を持つ「デュアルジェット」です。

火吹き棒を使用中に、誤って熱気を吸い込んでしまうと口の中を火傷するおそれがあります。

周囲に穴の空いたこの形状により、マウスピースに口をつけたまま息を吸い込んでも、先端から焚き火の熱気が逆流することはありません。代わりに24個の穴から新鮮な空気が取り込まれます。

※ 焚き火との距離を近付けて使用すると、持ち手部が高温になるおそれがあります。使用する際は耐熱手袋を装着してください。

※ 風向きによってはマウスピースが煙で覆われる事があります。その際は煙が取り込まれますのでご注意ください。

マウスピースのデザインには、田中金属製作所が国内特許を持つシャワーヘッド「ミックスジェット」のノウハウが活かされています。

ミックスジェットとは、シャワーの水流で空気を吸い込み、気泡を含んだ水流とすることで勢いを落とさずに節水する技術です。

「空気も水と同じ流体だから火吹き棒にもミックスジェットの技術が応用できるのでは？」というアイデアから「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」のマウスピースの形状が検討されることになりました。

そして生まれたのが、デュアルジェット構造のマウスピース。
息を吹くと、粘性摩擦により周囲の空気を引き込む効果を発揮します。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」は、火起こしをする時、強く息を吹く必要はありません。

周囲の空気を取り込むので軽く息を吹くだけで大丈夫。小さな炎を消すこともなく、火起こしすることができます。

大量に水蒸気を含む息に周囲の空気を混ぜることで、火吹き棒内部を流れる空気中の水分量が減少。

火吹き棒内部の結露が減るので、錆や細菌の繁殖がおさえられます。

3つ目の効果は、必要以上の空気を送り込まないこと。火を起こす時、強すぎる空気を送ると火の粉が舞ったり、灰が飛び散ってしまいます。

強すぎる空気を横の穴から逃がすことで、最適な空気量に調整するレギュレーター(調整器)としての役割も持っています。

3つの効果のバランスを取る為に何度もテストを繰り返し、マウスピースと穴の形状、寸法を決定しました。

素材に使用されたのは田中金属製作所が豊富な加工ノウハウを持つ真鍮です。複雑な形状にも加工しやすいので「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」にピッタリの材料でした。

真鍮は身近なものでは管楽器などに使われ、音質が優れていることでも知られている素材です。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」で息を吹くと、空気穴を空気が流れる微かな音がします。火起こしをする様子はまるで楽器を吹いているようでもあり、焚き火気分を盛り上げてくれます。

パイプの内径はφ14mm。
効率よく空気を送り込める太さなど様々な要素を検討して決定しました。

高精度な切削加工が行われているのでジョイントのつなぎ目にも空気の流れを乱すような段差や溝はありません。

持ち手の形状は、田中金属製作所のシャワーヘッドのデータを元に握りやすい大きさと太さで決定しました。

指四本で握りやすい長さと太さになっています。

ジェット(ノズル)の先端は内径φ10ミリ。流れてきた空気は絞られたジェットにより流速を上げて焚き火に吹き付けられます。

ジェット内部も切削加工でスムーズなテーパー形状になっているので、空気の流れを乱すことがありません。

美しい表面は削り出しならでは。切削後に電磁バレル研磨が施され、マットな仕上げという凝った作りです。

本体はねじ連結式。マウスピース、6本のジョイント、ジェットの8ピース構造(標準
仕様 540mmの場合)になっています。

ねじ部の加工は田中金属製作所の職人のプライドが余す所なく注ぎ込まれた部分です。
締め込み時の滑らかな感触を追求し、凸部のバリが出にくい”さらい刃”と”手研ぎの刃物”を使って切削加工。
更に極小なバリを取ることが出来る”電磁バレル研磨”によって凹み部の細かなバリまで取り去りました。

ねじ山部の外径はφ17.7mm。φ18mmの状態からねじ部の先端を0.15mm削って仕上げています。
ねじ山の先端が尖っていないのは「手が触れた時ケガをしないように」と考えてのこと。そのうえでガタツキが生じないように寸法を0.1mm単位で追求した結果、決定された寸法です。

組み立てる時感じるのは、ねじ込む時の心地よさ。
火吹き棒を組み立てる作業は、焚き火前の気分を盛り上げてくれることでしょう。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」は組立式なのでピースを追加すれば長さを70mm刻みで延長することが出来ます。
写真は標準仕様に6つのピースを追加して960mmにした状態です。

960mmまで伸ばした「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」を振ってもガタツキはありません。

常に清潔な状態に保つことができるというのも「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」で大事にしたポイント。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」は、水蒸気による結露が少ないことに加え、分解可能な構造なので手入れも簡単。

実はパイプ内径がφ14mmになっているのは歯ブラシを入れることまで考慮されてのこと。掃除が簡単で、常に清潔な状態を保つことが出来るのです。

田中金属製作所は岐阜県山県市(旧：美山町)で真鍮を中心とした金属の加工を50年以上続けてきた会社です。

緑豊かな大黒山を見据え、武儀川と神崎川に囲まれた美山地区で昭和40年、水栓工場としてスタートしました。

風光明媚な環境で働いていることもあり、社員一同「自然を大事にしたい」という気持ちが育っていきました。

昨今、キャンプブームで人気を集める焚き火では火起こしの為にウチワや火吹き棒を使います。その際、無駄に強い空気を送り込むと灰や火の粉を撒き散らし山を汚してしまう可能性もあります。

「長年培ってきた真鍮加工の技術を活かし、美しい山を守ることができないか」

調べてみると田中金属製作所がシャワーヘッドで確立させたミックスジェットの技術を取り入れ、削り出しで精密な加工を行えば、効率よく火をおこし、灰が舞わない火吹き棒を作ることが出来ると分かってきました。

こうして「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」のプロジェクトが動き出すことになったのです。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」の開発秘話

独特な形状が生まれた背景には「ひょっとこ」と「シャボン玉」との出会いがありました。

製品開発で火吹き棒の原点を調べていくと「ひょっとこ(火男)」に辿り着きました。「ひょっとこ」は竈（かまど）や火を守る神様とも言われており、その火吹き棒の使い方には大きな特徴がありました。竹筒を10センチほど口から離したところで手に持ち、口をすぼめて息を送り込むのです。（諸説あります。）

この方法は、実に理にかなっていました。
息の粘性摩擦により、口と竹筒の間に存在する空気が引き込まれ、より多くの空気を送ることができる。田中金属製作所が国内特許を持つミックスジェットに似ていると知った時は、運命的な出会いを感じました。

竹筒を口から10センチほど離す理由はもう一つ。火の熱気や煙を、直接吸い込まないようにするためです。

「ひょっとこ」の呼吸方法に倣い、熱気や煙が逆流せず、新鮮な空気を取り込める形状を考えてみましたが、試作とテストを繰り返しても満足いく結果になりませんでした。

デュアルジェット構造のアイデアが閃いた瞬間

解決の糸口は「シャボン玉のストロー形状」にありました。設計者が娘と「シャボン玉」を吹いて遊んでいる時、『吸い込んだらシャボン玉の液が逆流するからダメだよ』と何気なく言った言葉で、ストローが火吹き棒に似ていることに気が付きました。

本当にシャボン玉の液が逆流するのか、思いっきり吸い込んでみると逆流しない。理由は、ストローの途中に穴（スリット）が空いているためでした。

火吹き棒にも穴をあければ【吹きやすさ】と【吸いやすさ】を実現することができるのではないか？ デュアルジェット構造のアイデアが閃いた瞬間でした。

「ひょっとこ」を笑顔にする”ねじ連結”

ねじ連結式を選んだ背景にも「ひょっとこ」の存在がありました。「ひょっとこ」が片目を細めて顔を傾けているのは、火の粉や煙を避け、火傷しないようにするためだったと言われています。

焚き火を心の底から楽しんでいただく為には、「ひょっとこ」の表情が笑顔になるように炎の熱さを軽減させる必要がありました。

そこで、全ての部品にねじ加工を施すことにしました。炎の大きさによって自由自在に火吹き棒の長さを変えられる構造としたのです。使用する場面によって長さを選択することができ、それぞれ熱くない距離から焚き火を楽しむことができる形になりました。

※使用イメージ
【ソロキャンパー】焚き火の火力が小さい場合、標準の540mmで携帯性を優先
【グループキャンパー】焚き火の火力が大きい場合、960mmの最長仕様

素材として選んだのは田中金属製作所が長年使い続けてきた真鍮の丸棒です。
装飾品に使用されることも多い真鍮は、美しいだけでなく、長く使い続けることが可能です。世代を超えて愛されるギアにしたいという思いを叶える素材でした。

製作は無垢棒からの削り出し。

既製のパイプ材に比べると大変な手間がかかりますが、削り出しなら1/100ミリ単位の精密な加工が可能なことに加え、高い強度を出すことができます。

切削加工では多くの切粉が出てしまいますが、田中金属製作所ではこの切粉を回収。すべて再利用されて新しい真鍮素材として生まれ変わります。

異なる金属が混入すると真鍮として再利用することができなくなるため、この機械で削るのは真鍮のみ。

ムダを徹底的に省くことも自然環境に配慮し、ひいては美しい山を守ることにつながると考えています。

真鍮は美しく、実用強度も十分に高い金属です。削り出しによって作られた「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」は真鍮の特性を生かし、長く使い続けることが出来ます。

汚れたり表面がくすんできた時は、磨き込むことで輝きを取り戻す事ができるのも真鍮の良いところ。

自宅にいるときでも、焚き火に思いを馳せながら道具を磨くのは楽しいものです。研磨剤が入ったクロスを使うと表面の雰囲気は少しずつ変化していくことでしょう。「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」長く使い続けて、自分だけの火吹き棒を育ててみてください。

「火を息吹く真鍮 火樂～KAGURA～」

製品仕様（540mm仕様）
全長×外径×内径 540✕φ31.5mm✕φ14mm
（ジェット先端部はφ10mmにテーパー加工）
重量 363g
材質 真鍮（C3604）
表面仕上 切削加工+電磁バレル研磨
8ピース構造分割式（マウスピース✕1 ジョイント✕6 ジェット✕1）

田中金属製作所は『水栓バルブ発祥の地』と呼ばれる岐阜県山県市（旧：美山町）で昭和40年にたった1台の汎用旋盤で創業しました。

水栓メーカーの下請けだった町工場は、努力を積み重ねて真鍮部品の製造技術を磨きあげ、進化系中小企業として企画、製作、販売まで手掛けるメーカーにまで成長しました。

これからも真鍮加工品に特化しつつ、オリジナル商品の開発企画を行い、世界中の「あったらいいな」の声をカタチにしていきたいと考えています。